日産自動車、グローバル危機に対応する新たな改善策を発表

−環境悪化に耐え抜く組織に変更−

日産自動車株式会社(本社:東京都中央区銀座 社長:カルロス ゴーン)は9日、グローバル経済・金融危機を受けた新たな業績改善策を発表した。経営課題に対応し、将来の方向性を見据えた組織変更も併せて行う。

業績改善策
2008年度、日産は世界同時不況を受けて既に複数の対策を実施したものの、一段の状況悪化でキャッシュ・マネジメント戦略、経営体制、投資計画のさらなる見直しの必要性が生じている。具体的な対策は次の通り。

  • 業務改善に注力するため、2008年から2012年までの経営計画である日産GT 2012を一時中断する。ただし、品質とゼロ・エミッション車に関わるコミットメントは継続する。
  • 労務費は減収に応じて削減する。高コスト諸国における労務費を、現在の8,750億円から20%減の7,000億円に圧縮する。
  • 2008年度の取締役に対する賞与の支払いは行わない。2009年3月以降明らかな状況の改善があるまで、取締役及び執行役員の報酬を10%、日産と国内関係会社の全管理職の基本年俸を5%引き下げる。
  • 従業員を対象としたワークシェアリングの導入を協議し、年度末までに公表する。
  • グローバル人員数を2009年度中に20,000人削減し、23万5,000人から21万5,000人とする。
  • コアビジネスに集中し、企業スポーツ活動(硬式野球部、卓球部、陸上部)は休部する。
  • 在庫管理を強化する。2009年3月のメーカー在庫及びディーラー在庫は2008年3月の63万台から20%減の48万台になる見通し。
  • 勤務シフトの調整、休業日の設定、稼働時間の短縮等で、生産調整を行う。これらの取り組みで、2008年度通期のグローバル生産台数を当初計画から20%減に相当する78万7,000台減産する。
  • 2008年度の設備投資を前年度から21%節減する。2009年度には更に14%圧縮し、2008年度の3,840億円から2009年度には3,300億円以下に抑える。
  • モロッコとインドで予定していたルノーとの共同生産プロジェクトを見直す。インドのチェンナイでは工場立ち上げスケジュールを調整する。モロッコ タンジール近郊の工業プロジェクトへの参画は一時中断する。
  • 一部の新車プロジェクトの中止を含め、商品投入計画を見直す。2009年から2012年の間には、新規のAプラットフォームを採用したエントリー・カーのラインアップと電気自動車を含め、平均で毎年10車種の新型車を発売する。
  • 買掛金と売掛金を中心に運転資本の改善を図る。2009年度には1,300億円のキャッシュを生み出す。
  • ルノー・日産アライアンスの更なるシナジー効果創出を目指し、商品・技術への投資、サポート機能、購買コスト削減を中心に詳細を検討する。2009年度にはルノーと日産はそれぞれ最低900億円(7億5,000万ユーロ)のフリーキャッシュフロー確保に貢献する。

経営体制の変更
事業体制のスリム化に加え、地域軸と機能軸のマネジメント強化を目的に、2月9日付で役員体制を変更する。

最高執行責任者の志賀俊之は、新たに3つに構成される地域全体と、渉外、生産、研究・開発、購買、商品企画、デザイン、販売・マーケティングを統括する。同氏は引き続き社長のカルロス・ゴーンの直轄となる。

常務執行役員のコリン ドッジは新たにチーフ・リカバリー・オフィサーに就任し、社長のゴーンの直轄となる。同氏は実行する全社的な改善活動を指揮することに加え、経営企画とグローバル・コントロールを担当する。また、同氏は新設のアフリカ・中東・インド・欧州をまたぐ地域を統括する。

副社長の西川廣人はこれまでの購買に加え、関係会社管理を担当し、新設の日本・中国・アジア太平洋市場をまたぐ地域を統括する。

副社長のカルロス タバレスは新設の北米・中南米をまたぐ地域を統括する。

執行役員のアンディ パーマーは常務執行役員に昇格し、商品企画、インフィニティ事業部、小型商用車(LCV)事業部、新設の電気自動車事業部を統括する。同氏は新たにエグゼクティブ・コミッティのメンバーに加わる。

以上の他に、エグゼクティブ・コミッティのメンバーは次の通り。

  • アラン・ダサス最高財務責任者(社長のゴーン直轄)
  • 遠藤淳一常務執行役員 グローバル販売・マーケティング担当
  • 今津英敏副社長 生産・SCM担当
  • 山下光彦副社長 研究・開発、TCSX(トータル・カスタマー・サティスファクション)担当

社長のカルロス・ゴーンは「我々は今回の組織変更によって、このグローバル危機を乗り越えるだけでなく、事態の収拾に備えて、急速な力強い成長を果たす態勢を整える。組織は変化し続ける経営ニーズに柔軟に応えなくてはならないが、日産には将来を担うに十分な人財、多様性、そして経験があると信じている。」と述べた。

以 上