2014年度決算報告 日産自動車株式会社 取締役社長兼CEO カルロス ゴーン

Carlos Ghosn(カルロス ゴーン) - 日産自動車株式会社 社長兼最高経営責任者(CEO)

2014年度、日産は日本やいくつかの新興国における厳しい市場環境にもかかわらず、確固たる財務実績を実現しました。営業利益と当期純利益は当社の見通しおよび昨年実績を上回る結果となりました。自動車事業のフリーキャッシュフローは大きくプラスになり、堅固な財務体質となっています。

2014年度通期の連結売上高は、11兆3,800億円、連結営業利益は5,896億円となり、売上高営業利益率は5.2%となりました。

当期純利益は、前年から17.6%伸び、4,576億円に達しました。自動車事業のフリーキャッシュフローは3,658億円となり、2014年度末は、自動車事業で1兆3,900億円のネットキャッシュとなりました。

当社は着実に成長し、戦略的な中期経営計画である「日産パワー88」のゴールに向け、好位置につけています。

2014年度販売状況

2014年度のグローバル全体需要は前年比2.7%増の8,536万台となりました。当社は、市場の伸びに相当する販売増を実現し、グローバル販売台数は前年度の519万台から532万台に増加しました。グローバル市場占有率は前年並みの6.2%です。

主要な市場の内訳をご説明します。

日本国内の全体需要は前年比6.9%減の530万台に留まりました。
当社の販売台数は前年比13.3%減の62万3,000台となり、市場占有率は11.8%となりました。厳しい状況が続いているものの、「エクストレイル」や「デイズルークス」を含む商品の好調な売れ行きは心強い限りです。

会計年度が暦年ベースの中国の全体需要は前年比7.6%増の2,234万台となりました。
当社の販売は前年並みの122万台となり、市場占有率は5.5%でした。
世界最大の市場である中国では、依然として日系メーカーを取り巻く環境が厳しいことに加え、新たな排気規制により、小型商用車メーカーは、軒並み販売を落としています。
しかしながら、日産は引き続き日系メーカーナンバーワンの座を維持し、「シルフィ」シリーズや中国カー・オブ・ザ・イヤー2014に輝いた「エクストレイル」をはじめとするモデルが販売をけん引しています。

北米では、過去最高の販売台数を記録しました。
米国の全体需要は前年比6.9%増の1,673万台となりましたが、当社の販売は8.9%増の140万台に達し、市場占有率は8.4%となりました。主力モデルの「アルティマ」、「ローグ」、そして「セントラ」が好調を支えています。

カナダでも、当社の販売台数は全体需要の伸びを上回り、前年比22.4%増の11万8,000台に達しました。市場占有率は6.3%です。

メキシコでは、引き続きトップブランドの地位を維持しており、販売台数は前年比16.9%増の31万台を記録し、市場占有率は26.1%に達しました。

欧州の全体需要は、前年比1.7%増加しました。
当社の販売台数は前年比11.7%増の75万5,000台となり、市場占有率は過去最高の4.3%に達しました。「キャシュカイ」や「ジューク」など、日産をクロスオーバーセグメントのリーダーに押し上げた商品群がけん引役を果たしました。

ロシアでは、全体需要が18%落ち込んだにも拘わらず、当社の販売台数は、前年から5%以上増加し、17万3,000台となりました。市場占有率は7.6%に伸びました。

その他市場の全体需要は前年比2.6%減の2,015万台に留まりました。
当社の販売台数は前年比1.1%増の88万9,000台となりました。その内、中東では前年比4.7%増の23万7,000台を販売する一方、アジア・オセアニアでは前年並みの36万3,000台、中南米では前年比1.2%減の18万4,000台の販売台数となりました。

2014年度連結財務実績

中国の合弁会社に持分法を適用する会計基準に基づき、通期の実績をご報告いたします。

  • 連結売上高は前年から8,927億円増加し、11兆3,800億円となりました。
  • 主な増収要因は、販売増と、円高是正による海外の売上換算増の影響です。
  • 連結営業利益は5,896億円となり、売上高営業利益率は5.2%となりました。
  • 当期純利益は4,576億円となり、前年から17.6%増加しました。

 

営業利益の増減要因は次の通りです。

  • 686億円の為替変動による増益は、主として、米ドルに対する円高是正によるものです。
  • コスト項目は、1,127億円の増益要因となりました。商品性向上によるコスト上昇と原材料価格の上昇が購買コストの削減効果の一部を打ち消しました。
  • 台数・車種構成は合計で324億円の増益要因となりました。
  • 販売費用の増加は、438億円の減益要因となりました。
  • 米国リマーケティングの実績は395億円悪化しました。
  • 研究開発費は1億円増加しました。
  • 生産コストは201億円増加しました。
  • その他項目は190億円の減益要因となりました。

 

自動車事業実質有利子負債は1兆3,900億円のキャッシュ・ポジションとなり、2013年度末の1兆円から改善しました。

中国の合弁会社比例連結ベースの財務実績は次の通りです。

  • 連結売上高は12兆4,100億円に増加しました。
  • 連結営業利益も7,186億円に増加しました。
  • 当期純利益は4,576億円に増加しました。
  • 自動車事業のフリーキャッシュフローは3,523億円となりました。
  • 2014年度末の自動車事業実質有利子負債は1兆5,200億円のキャッシュ・ポジションとなりました。

 

比例連結ベースでは、前年度から飛躍的な改善を果たしています。

  • 連結売上高は8.5%増。
  • 連結営業利益は18.6%増。
  • 売上高営業利益率は5.8%に改善。
  • 当期純利益は前年比17.6%増です。

以上の結果は、「日産パワー88」という目標に向けた、堅固な土台となっています。

「日産パワー88」への道のり
日産は世界中で新車攻勢をかけており、重要市場で、販売と売上をけん引しています。

「キャシュカイ」、「エクストレイル」、そして「ローグ」等、「コモン・モジュール・ファミリー」をベースとした主力モデルの販売が好調です。

2014年度は、各ブランドを合せ、グローバルで10の新型車を発売しましたが、複数の賞に輝いたSUV「ムラーノ」とピックアップトラックの「ナバラ」もその一例です。

2015年度も新車攻勢は続きます。

  • 先月米国で生産が始まった新型「マキシマ」は、初夏に発売予定です。
  • 若い中国のお客さまのために開発した新たな中型セダン「ラニア」は今年の後半に投入予定です。
  • 新型ピックアップトラックの「タイタン」は、年末までに米国のディーラーに届く予定です。

 

プレミアムブランドのインフィニティからも、数々の新型車を「日産パワー88」の期間中に発売します。

インフィニティは、中国では、最も成長著しいラグジュアリーブランドであり、人気を博しているセダンのロングホイールベース、「Q50L」は現地で生産を開始しました。

今年の後半に欧州で発売する「Q30」は、インフィニティブランドのグローバルラインアップの一翼を担う重要モデルです。中期経営計画の期間中に継続する商品攻勢の一部として、最近のモーターショーで好評を博したコンセプトカーをベースにした「Q60」と「QX30」の販売も計画しています。

インドネシア、インド、ロシア、そして南アフリカを含む、ダットサンブランドを投入した新興国では、ダットサンの売上が当社の業績に大きく寄与するでしょう。

日産は新車攻勢に加え、数十年後のモビリティ社会を変革する技術の開発にも継続的に取り組んでいます。将来の自動運転技術が非常に話題となっていますが、実は自動運転の基礎となる技術はすでに存在しています。

そのひとつが、年内に国内の主要モデルに搭載する「エマージェンシーブレーキ」です。この技術を来年にかけて、中国や欧州、米国にも拡大していきます。

また、2016年までに、渋滞時と単独レーンでの自動運転を実現するシステムを商品化します。2018年までには、高速道路と複数レーンで走行可能な自動運転技術を導入します。2020年までには、複雑な市街地や交差点を自動的に走行できる自動運転技術を採用する予定です。

日産は同時に、ゼロ・エミッション車のリーダーであり続けます。「日産リーフ」は今や、世界で最も売れている量販電気自動車です。今年、累計販売台数は20万台を超える予定です。また、ゼロ・エミッション技術の採用を、小型商用車「e-NV200」と中国のヴェヌーシア「e30」にも拡大しました。

商品の進歩に加え、当社は充電インフラの整備にも先頭に立って推進しています。例えば米国では、公共の充電スタンドを無料で使用できる「No Charge to Charge」というサービスを更に拡大しています。日本では、全国の急速充電器の数が、今年度半ばまでに約6,000基に達する見込みです。

新型車と新技術の投入戦略は、ブランドパワーとセールスパワーの向上に向けた革新的なマーケティング活動によって強化されています。

2014年度、当社のブランドは、欧州サッカー連盟UEFAチャンピオンズリーグやNFLスーパーボウル等、世界的な大会とのパートナーシップを通じて、知名度を上げています。

このようなマーケティングの取り組みが、ブランド価値を高めます。その結果、日産は、有力なインターブランド社によるブランド・ランキングで引き続き順位を上げ続けています。昨年、当社は、「ブランド価値の創造とマネジメントで最も優れたグローバルブランド」に選ばれました。

当社は競争力と品質の改善に向けて、あらゆる取り組みを実施しています。

「コモン・モジュール・ファミリー(CMF)」は、大きなスケールメリットを生み出し、高品質で数々の賞を受賞した新型車の投入につながりました。今後のCMF適用車は最大で60%の構成部品を共用することになります。2020年までには、ルノー・日産アライアンスのクルマの2/3が高品質なCMFを適用することになるでしょう。

品質の向上は商品魅力につながります。また、新型車のスムーズな立ち上げはそのモデルの好調な販売にもつながります。当社では様々な品質向上プロセスを新たに導入したことで、米国市場での新型車立ち上げプログラムで非常に良い結果を残すことができました。

CMF戦略は、アライアンス戦略から生まれたシナジーの好事例の一つです。2014年度のルノー・日産アライアンスのシナジー効果は38億ユーロとなりました。

昨年発表しました、研究・開発、生産技術・物流、購買、人事といった主要な機能の統合は、更なるシナジー効果を生み出すことになるでしょう。2016年までに少なくとも43億ユーロのシナジー効果を実現することがコミットメントです。

2015年度見通し

2015年度は、グローバル市場の伸びを上回る販売台数を見込んでいます。グローバル全体需要は前年比微増の8,544万台を前提に、当社の販売台数は前年比4.4%増の555万台を見込んでいます。グローバル市場占有率は6.5%を想定しています。

全体需要は中国と欧州で成長が見込まれますが、継続する日本・ロシア・ブラジルでの強い逆風によって打ち消されます。全体需要の逆風にも関わらず、当社は日本とロシアを除く、全ての主要市場で台数を伸ばします。

継続中のコストと販売管理の徹底、新車攻勢、そして更なるアライアンス・シナジーの創出が、今年度の利益ある成長につながることでしょう。

東京証券取引所には、次の通り2015年度通期予測を届け出ました。為替レートは1ドル115円と1ユーロ130円を前提としています。こちらの業績予測は、中国の合弁会社に持分法を適用した場合の値です。連結売上高は前年比6.4%増の12兆1,000億円。連結営業利益は6,750億円、売上高営業利益率は5.6%。当期純利益は前年比6%増の4,850億円を見込んでいます。

2014年度から2015年度の営業利益の増減要因の前提は次の通りです。

  • 為替変動による400億円の減益。
  • 販売とマーケティング関連の改善による350億円の増益。
  • モノづくり関連の改善による増益1,100億円。
  • その他項目による196億円の減益。

 

中国合弁会社比例連結ベースでは、2015年度の連結売上高は前年比7%増の13兆2,700億円を見込んでいます。連結営業利益は8,350億円、当期純利益は4,850億円です。

以上の損益の見通しと、堅実なフリーキャッシュフローを反映した結果、今年度も積極的な配当政策を実施します。2015年度の業績見通しを前提として、通期配当を、27%の増配に相当する一株当たり42円に引き上げる予定です。

日産自動車は、複数の市場の厳しい環境にも拘わらず、2014年度も確かな業績を残しました。

2014年度の実績は、当社の健全な財務体質、適切な商品ラインアップ、そして目標に向けた実行力が揃っていることの証です。日産自動車は、2016年度末までに持続可能な8%の営業利益率を達成するというコミットメントと、8%のグローバルマーケットシェアというターゲットからなる「日産パワー88」に向かって、正しい道を歩んでいます。

以 上