田沼 謹一 チーフ・ビークル・エンジニア メッセージ

「最新のGT-Rが、最上のGT-Rである。」

常に進化し続けることを約束しているGT-Rの開発責任者として、企画責任者である田村が狙う「オトナのGT-R」というコンセプトを受け、開発チームに設定した目標は「さらなる上質な速さの追求」でした。
すでに世界の名だたる競合と肩を並べ、スーパースポーツカーとして認知されているGT-Rの走りをさらに進化させることは、想像を超えるタフなチャレンジでした。

今回、まず我々が手掛けたのは、GT-Rの財産ともいえる、開発初期から蓄積してきた10年を超える膨大な
走行データの分析でした。ニュルブルクリンク24時間レース、アウトバーンはもとより、世界中を走り回って得た数千にわたる貴重なデータから、さらなる速さにつながるヒントを見つけるため、途方もない時間を費やしました。安全に速く走ることは、タイヤを安定した状態で路面にグリップさせ、駆動力をかけた状態で車両をいかに前に進められるか、というとてもシンプルかつ厳然たる真理をどれだけ実践できるかに尽きます。
このために、プレミアム・ミッドシップパッケージが、理想的なユニット配置と重量配分、そして空気さえも味方につけたエアロダイナミクスを身に着けていることはご存知のとおりです。さらに今回は、NISMOのレース活動への情熱と技術を注ぎ込み、究極のパフォーマンスを追求したGT-R NISMOが登場しますが、サーキットタイムアタックを精力的にこなしたNISMOチームとのコラボレーションが、新たなる次元の走りのKeyとなりました。

サーキットでのラップタイム更新を実現するためには、アクセルを踏める安定したボディの動き、駆動力をしっかり伝えるタイヤグリップ、正確無比なステアリング特性などなど、すべてが高次元にまとまっていなくてはなりません。さらなる安定性と速さを手に入れるため、NISMOのサスペンションセッティングのノウハウと我々の徹底的な走行データ分析から、路面にギャップがあるいわゆる不整路においてもよりタイヤがグリップできるよう、路面追従性を劇的に向上させたサスペンションを実現しました。スプリング、ショックアブソーバーといったサスペンションの基幹パーツはもとより、スタビライザー、各ブッシュ類、タイヤ本体やショックアブソーバー制御までも含めて、すべての構成部品に手を入れています。

この成果として、走行安定性を示す特性に「ステアリング修正舵の少なさ」がありますが、2014年モデルでは従来の約半分で済むまで安定性が向上しています。また、路面追従性を示す「接地荷重変動」についても、約半分とすることができました。さらに、この新しいサスペンションセッティングの特筆できる副次的な効果として、車両上下G変動、姿勢変化を半減させることもできました。一般的な言い方をすると、乗り心地がよくなり快適性が増したということです。こうして速さを追求しつつ、新たな次元の「上質」な走りをも具現化することができたのです。

もちろん走りの進化は運動性能だけに留まりません。「オトナのGT-R」であるために、ドライバーのパッションを
刺激するサウンドにも徹底的にこだわり、造り込みました。
また、吸遮音・制振材の最適配置によってパネル振動低減を図り、スポーツカーに求められる雑味のない迫力のあるサウンドに磨き込むとともに、Bose®サウンドシステム装着車では、最新技術のアクティブノイズコントロールによって、低回転での不快なこもり音を排除しています。

エクステリアでは、稲妻閃光をイメージしたシグネチャーを織り込み、機能的にもより高配光とした新LEDヘッドランプと、特徴あるテールランプをライン発光とすることで視認性を向上させました。
インテリアも新色となるアイボリーを追加したファッショナブルインテリアや、シフトゲートなど細部の造り込みを、匠の技術とおもてなしの精神で実施しました。

私は、この新しいGT-Rをより多くのお客さまにお届けし、最上のドライビングプレジャーをお客さまに安心してご体験いただきたいと願っています。

 

チーフ・ビークル・エンジニア
田沼 謹一