日産自動車、むち打ち症低減を目的としたアクティブヘッドレストの採用を決定

平成10年9月7日
                                日産自動車株式会社
                                広報部

 日産自動車、むち打ち症低減を目的としたアクティブヘッドレストの採用を決定

日産自動車株式会社(本社:中央区銀座、社長:塙 義一)では、交通事故におけるむち打ち症低減を図るため、近く発売を予定している高級乗用車の運転席、助手席に新開発のアクティブヘッドレストを標準装備する。アクティブヘッドレストは後面衝突時に、ヘッドレストを前上方へ移動させることで、前席乗員の頚部負担の軽減を図るものである。
今後、フルモデルチェンジ等の機会をとらえ、順次採用*の拡大を図っていく予定である。
*ヘッドレスト一体型シート搭載車を除く

 自動車乗車中、交通事故に遭遇し負傷した人の数は、平成9年は約57.3万人に上っている。そのうち、車両後面部に衝撃を受けた場合(ほとんどが追突)の負傷者が約半数を占めており、さらにその約90%(25.2万人)が頚部を受傷している。

 そこで日産自動車では、(財)日本自動車研究所、筑波大学臨床医学系整形外科の協力を得てむち打ち症に関する研究を続けてきた。その結果、次の3つの要因がむち打ち症に深く関与していることを確認し、これらを効果的に抑えるアクティブヘッドレストを開発した。

要因①頚部への強い突き上げ
追突の衝撃で、普段は湾曲している背骨がシートバックに押されて伸ばされると同時に、
上半身が上方に動き頚部を突き上げる。
要因②急激な頭部の後方移動
追突の衝撃で、頭部だけが上半身に対して急激に後方へ移動し、頚部に負担が加わる。
要因③頭部の後傾
追突の衝撃で、頭が上半身に対し後ろに大きく傾いていくことにより頚部に負担が加わ
る。

今回、開発したアクティブヘッドレストは、従来のヘッドレストに対し、作動プレート、リンク機構、リターンスプリング等を構成部品としたシステムをシートバックに内蔵している。
追突された衝撃で乗員がシートに対して相対的に後方へ移動する力が、リターンスプリングの反力を超えることで作動プレートを移動させ、同時にリンク機構を介して、てこの原理によりヘッドレストを前上方へ移動させることにより、乗員の頭部を早期にサポートする。シンプルなメカ式構造であるため信頼性が高い。

具体的な効果は、次の通り。
  (むち打ち症発生メカニズム研究における医学目的の志願者実験結果:追突車両速度
    約15 km/h相当)

要因①の頚部への突き上げについては、突き上げ力が約35%低減。
乗員がシートバックに押しつけられ、作動プレートを移動させることにより、衝突時乗員の
背中に加わる衝撃が緩和され、頚部への突き上げ力を抑えることができる。
要因②の急激な頭部の後方移動については、首の傷害指数(NIC値*)が約65%低減。
要因③の頭部の後傾については、頭部の後傾角度が約35%低減。
追突された時にヘッドレストが前上方へ移動することにより、頭部を早期にサポートするた
め、乗員頭部の後方移動と後傾を抑えることができる。
*NIC値(Neck Injury Criterion):頭部後方移動の急激さを表す首の傷害指数

さらに、後面衝突専用のダミーを用いた実験においても著しい効果を得ており、新開発アクティブヘッドレストは、追突された時に頚部に発生するむち打ち症に対し、極めて有効であると考えている。

日産自動車では、トリプルセーフティ(インフォメーションセーフティ、コントロールセーフティ、インパクトセーフティ)の考え方に基づき安全装備の拡充を進めている。インパクトセーフティの分野では、世界トップレベルの衝突安全性を実現した「ゾーンボディ」の拡大採用やデュアルエアバッグの標準装備化に加え、乗員の胸部だけでなく頭部への衝撃も緩和するSRSサイドエアバッグの拡大採用にも取り組んできた。今回の高級乗用車へのアクティブヘッドレストの標準装備は、これらの取り組みをより一層推し進めるものである。

                                        以上